僕は有川浩を初めて読んだのですが。良い小説ですね。読書という行為にてヒトがテクストから何を読み取るかはそれこそ人それぞれですが。僕は生真面目なエンジニアとして働いていた時期があり、自衛官を生真面目なエンジニアと重ね合わせました。また、この作家はどうしてここまで挫折感を描くの上手なのかと。物語で挫折に触れる度、私なんぞはつい涙を流してしまいます。
物語は軽快に進んでいきますが、それも自衛隊という組織、憲法9条という理想と国際情勢という生々しい現実の中で物語るには重い集団を背景にしているからこそ際立つ物語の運びの上手さ。ラブストーリーも慎ましやかに。
そして最後に付け加えられた、「あの日の松島」。一般名詞である「震災」を代名詞として語られる災厄。それまでの作中で触れられた飛行隊がここに繋がる。語り口は静かに。
僕なんぞは10代の多感な時期を冷戦と言う名の戦時下に過ごしてきたのでまた他者とは自衛隊に対する感情は違うのかもしれないけど。少なくとも成長物語としても、この作品は読まれるべきだなあと思います。
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